ふ~~、疲れました。この本、ビジネス書としてはなかなか長くて、ちょっと疲れました。
著者はワイアード編集長でもあり、「ロングテール」という本を出したクリス・アンダーソン氏。分かりやすい本を期待しましたが、予想に反してゼロという数字を発見した歴史とか、とうもろこしが大量生産できるようになった経緯とか、ちょっとした経済学の本みたいなくだりが続き、くじけそうになりましたけど、年末年始を利用して頑張って読みました。
結果的には、読んでよかったと思いました。これは新しい時代の経済学の教科書とも言えます。従来の経済学が「通貨」にしか着目していなかったのと対照的に、著者は通貨では表現できない「フリーの価値」に着目して論を展開していきます。考えて見れば、テレビやラジオは視聴無料な訳ですから、決して物珍しいものではないのです。何を無料にしてどこで稼ぐかというビジネスモデルの勝負とも言えます。
途中、読みながらTwitterにつぶやいたメモを引用します。
82頁:マイクロペイメントというビジネスモデルは全て失敗する運命にある。いくら安くしても認知作業のコストは残るからだ。
206頁:音楽を包装して売るレコード会社のやり方は、末期的なビジネスだ。しかし、レコード会社以外のほぼ全ての音楽産業は成長していて、フリーを利用している。プリンスは自分のニューアルバムを新聞に景品でつけて、ロンドン公演を大成功させたらしい。
215頁:ティムオライリー曰く「作家の敵は著作権侵害ではなく、世に知られないでいること」と。ここまで読んできてなんとなく分かってきた。フリーにすることで、恐ろしく拡がる。それ自体がパワーになる。パワーがないと存在意義はない。
264頁:中国とブラジルはフリーの最先端を行っている。音楽CDの95%は不正コピー。しかし、そのおかげで何百万人に音楽を届け、ライブツアーができる。入場料とスポンサー収入が得られる。
275頁:ブラジルはオープンソースの利用で世界の先頭に立っている。リナックスによるATMネットワークを世界で最初に構築した。ジェネリック医療品も最大限に活用しているそうです。
301頁:希少なものを潤沢なもののような値付けをすると悲劇が起こる。つまり、潤沢なもの(原価のかからないもの、または安いもの)をフリーにせよと。それが電子データであり、CPU負荷であり、ネットワーク負荷であると。
310頁: フリーは魔法の弾丸ではない。無料で差し出すだけでは金持ちになれない。フリーによって得た評判や注目を、どのように金銭に変えるかを創造的に考えなければならない。ポイントはここですね。
(つぶやきメモ引用終わり)
最初、今後の新規事業の勉強のためと思って読んでいたのですが、読み進めるにつれ、既存事業にも適用できるのではないかと思うようになりました。実際、フリーとは幅広い概念でした。
自分たちのビジネスにおける「潤沢なもの」を見つけ出し、それを無料化することでパワーを得る。そのパワーを元に「希少なもの」から上がる収入を最大化する。
やはり、ITだけの話ではないと思います。21世紀にビジネスで成功するためには、このフリーの価値に着目して、それをうまく使いこなすことが必要で、この頭の体操をしなければならないのだと、思いました。おススメします。
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